インタビュー

2023.03.23

第18回 日本ミニチュアフード協会会員インタビュー【彩夏さん】 | 日本ミニチュアフード協会

日本ミニチュアフード協会会員さんへインタビュー 第十八回

樹脂や粘土などでできたミニチュアフード。その作り方を学べる日本ミニチュアフード協会(以下協会)の会員さんをインタビューする本ページでは、素敵な個性を持った会員さんたちを深掘りし、読者の皆さまにお伝えしています。

第十八回目は、見ると間違いなく笑顔になれる愛らしい「くまちゃん」を制作する彩夏さんです。事前に野津先生から「ほっこりする可愛さですよ〜!」と伺っていましたが、Instagramの投稿を見た瞬間、想像以上の世界観に心を奪われました。独自のキャラクターを作品に登場させる個性と、抜群のセンスを持っている彩夏さんの魅力に迫ります。

Q. こんにちは。かわいい世界観を表現されている彩夏さんのインスタに魅了されました。まずは、ミニチュアフードとの出会いから教えてください。
彩夏さん
彩夏さん
ありがとうございます。そんな風に思ってもらえて嬉しいです!
もともと保育士だったのですが、コロナ禍で体がそんなに強い方ではないこともあって、一度退職したんです。その後、しばらくの間は何もせずに過ごしていたのですが、そんな時に夫がネットでミニチュアフードを発見し、「家の近くにあるけど、行ってみたら」と勧めてくれまして…。



Q. 切っ掛けは、旦那さまだったのですね。面白い!
彩夏さん
彩夏さん
そうなんです。結構多趣味なのですが、なかなか「これ」と注力したいことが見つからず、中途半端な趣味が多い状態でして…(笑)。自分にピッタリとはまることを、ずっと探していました。それを知っていた夫がネットで日本ミニチュアフード協会の認定教室を見つけたんです。客観的に見て私に合うと感じたのだと思います。



Q. 素敵な旦那さんですね。ちなみにこれまで、どんなことに挑戦してきたのですか?
彩夏さん
彩夏さん
お菓子作りやネイルアート、ラテアート。あとは、釣りや合唱団、バンド…。興味を引かれては、飛びつき、かじって…という感じ(笑)。結構どれも中途半端な状態だったので、何かを極めてみたいと強く思っていました。

Q. 幅が広いですね。何でも器用にこなせてしまう分、熱中し続ける「何か」と出会うのは大変そうです。そんな彩夏さんに「ミニチュアフード」を探し当てた旦那さんが凄い! 薦められて、すぐ通い始めたのですか?

彩夏さん
彩夏さん
ミニチュア作りという趣味があることを初めて知り、すぐにお教室の体験を予約をしました。でも、その日まで待てなくて(笑)、自分で粘土を買ってきてネットやユーチューブを見ながら作っちゃいました。

Q. え~! 予約までしてるのに(笑)。熱意が凄いです。
彩夏さん
彩夏さん
はちゃめちゃな話なのですが、インスタに作ったミニチュアを載せて、みんなに見てもらいたいな…と、衝動的に思ってしまって(笑)。
その時はトーストを作ったのですが、どうしても胡椒を乗せたくなって、代替品が分からず、本物をかけたりして…。今考えると笑い話です。

Q. 予行演習もバッチリな状態(笑)で、実際に教室へ通われた感想はいかがでしたか?
彩夏さん
彩夏さん
すごく緊張して行ったんです。そこで迎えてくれた、sayaka先生がとても、かわいくて面白くて、説明も上手で…。初心者にも分かりやすく教えてくださって、一気に緊張が解けました。粘土がかわいいものに生まれ変わるのが嬉しくて、温かい雰囲気にも感激しました。また、初回なのに「これがお仕事になったら嬉しいな」って直感的に思ったことも覚えています。


認定レッスンで作ったミルフィーユ

Q. 体験の段階でそこまで感じるだなんて、運命的ですね。
彩夏さん
彩夏さん
はい。「ミニチュアでお仕事するためには、どうしたらよいか」を、結構しつこく、sayaka先生に聞いちゃいました。ご迷惑だったかもしれません…(笑)。でも「協会に入会して、作家として活動しても良いし、講師になることもできますよ」と、丁寧に対応してくださって。「ミニチュアでお仕事ができたら、どんなに楽しいだろう」と妄想を膨らませながら帰路につきました。



Q. 講師と作家。両立されている方もいらっしゃるし、悩ましいですよね。彩夏さんは直感的にどちらに惹かれましたか?
彩夏さん
彩夏さん
私の場合は作家でした。「自分が手掛けた作品を、たくさんの方たちに見てもらいたい」という気持ちが大きかったです。ただ、教室に通い続けるうちに、キラキラ輝きながら教えてくださる先生の姿に憧れ、講師も素敵だと感じました。



Q. 彩夏さんが、キラキラとした眼差しで、熱心に教室に通う姿が目に浮かびます。実際に学び始めてからは、スムーズに技術を取得していく…という感じだったのでしょうか?
彩夏さん
彩夏さん
全然スムーズじゃなかったです(笑)。一生懸命作りはするのですが、思い通りのものができなくて苦労しました。大量に作った中で、気に入ったものは、ほんの少しだけです。すごく楽しいのですが、時間がとても掛かるタイプです。ただ、毎日気が済むまで作り続けてしまう性格なので、気付くと朝というケースも多いです。



Q. また、それが楽しくて辞められないんですよね。お気持ちわかります(笑)。
ところで、彩夏さんの作品にはオリジナリティーがありますよね。制作時に大切にされていることなどはありますか?
彩夏さん
彩夏さん
スマホに「アルバム」を作っています。日常生活で、食べておいしかったもの、可愛いと感じたものを撮影して、ストックする写真のフォルダーです。それを深夜にニヤニヤしながら一人で見ています。その写真を参考にしながら作品を作っています。



Q. 冒頭で話されていた「熱中できる何か」と出会い、生き生きと楽しまれている彩夏さんを羨ましく思います。ちなみに、これまでいくつも出会ってきた趣味との違いは何だと感じますか?
彩夏さん
彩夏さん
今までの趣味は「ここは好きだけど、ここは苦手」という、「欠けている部分」がありました。例えばネイリスト時代は、ネイルを塗る行為は好きですが、それをお客さんの目の前で行う緊張感や恥ずかしさが苦手でした。その点、ミニチュア作りは、粘土があればいつでもどこでもできます。人の目を気にせず、気が済むまで続けられるのも嬉しいポイント。これこそ「願望を全部満たしてくれている」と感じました。



Q. なるほど。パーフェクトだったわけですね。まさに天職。教室を卒業したらすぐに作家への道を進まれた感じですか?
彩夏さん
彩夏さん
はい。お教室は週に1回通っていたので3カ月で卒業しました。その後、協会の会員になり、すぐに百貨店でのイベントがあったので、その時に作家デビューを果たしました。当日になるまで「私の作品が、本当に商品になるのか、売れるのか…」と、不安で不安で(涙)。
でも、実際に売れる光景を見て感動しました。SNSを調べると、購入してくださったお客様が、私の作品をアップしてくれていたりして…。本当に嬉しかったです。

Q. 自分の作品が、誰かを笑顔にできるって凄いことだと思います。素敵ですね。その時は何を販売されたのですか。
彩夏さん
彩夏さん
「あんこ大好きリング」という三つのリングセットです。小倉トースト、いちご大福、あんパンの指輪。「あんこ」の可愛さを作品にしたくて、あんこが入ったスイーツを、例の「アルバム」から探しました。「食べ物のおいしい瞬間を切り取る」のが好きなんです。例えば、トーストはバターが溶けている時とかです。それをミニチュアで表現することが多い気がします。


「あんこ大好きリング」

Q. 確かに、彩夏さんのミニチュアは、思わず唾が出ちゃうデザインが多いかも…(笑)。アイデアを練って、デザインして…と、制作には相当、愛情を注がれていますね。
彩夏さん
彩夏さん
そうですね。私の場合は、作る速度も速くないため、時間は掛かっています。でも、今までこんなにも夢中になったことがなかったので嬉しくて、楽しくて。最初にインスタにアップしたい願望があったとお伝えしたのですが、ありがたいことにフォロワーも少しずつ増えて、それも励みになっています。



Q. 今、見るとインスタのフォロワーは5000人を超えていますね。これは頑張るエネルギーに繋がりますね。展示会の後も、「AJCクリエイターズコンテスト」で入賞されて東京都美術館に作品が展示されるなど、驚異のスピードで進化を遂げられています。確かこの時は、会員になってまだ2カ月くらいですよね。
彩夏さん
彩夏さん
最高潮にミニチュアフード作りにハマっていて(笑)。美術館という大きな場所に、飾って頂き、モチベーションがめちゃくちゃ上がりました。友達が見に来てくれたり、親が喜んでくれたりしました。それを見て「作家としてやっていきたい」という気持ちがますます強くなりました。

Q. 協会に所属することで世界が広がったのですね。いろいろな経験をされたようですが、中でも心に残ってることは何ですか。
彩夏さん
彩夏さん
子ども塾のワークショップのアシスタントに入れたことです。元々、子どもが好きで教育の場にいたため、ミニチュアと教育の場が交わるシーンに携われたのが嬉しかったです。

Q. 好きなものの掛け算ですね。楽しさが倍になりそう。他にも何かありますか。
彩夏さん
彩夏さん
メーカーさんが新しく販売するパステルカラーの色を使って、見本を作るという仕事をいただきました。野津先生からお話を聞いた時、「本当に私でいいのか」と不安もありましたが、挑戦すると喜びの方が大きかったです。
そして、今年は念願だったAJCの招待作家にも選ばれました。まさか自分に話が来るとは思ってなくて、びっくりしました。目標というか、夢の一つだったので、こんなに早く叶うだなんて…。プレッシャーもありましたが、自分らしさを全面に出した作品が作れたと思います。スイーツやクマさん、パステルカラーも入れたい。そんな思いが組み合わさってできたのが「くまの焼き菓子とケーキのお店」です。



Q. めちゃくちゃ可愛い。作品をよく見ると、クマさんがちょこちょこ顔を出しているところがたまりませんね。
彩夏さん
彩夏さん
見てくださる方に「クマちゃん探し」をして楽しんでいただけたら嬉しいです。引き出しから出ている子は、裏から見るとぶら下がっていたり…と、結構細かいところにこだわりました。手に取った時に、さまざまな角度から見て楽しめるように工夫を盛り込んでいます。



Q. サプライズ感を盛り込むなど、お客さんに対する心配りも、彩夏さんの作品が人気な理由なのかもしれないですね。最後に今後の展望や目標をお聞かせください。
彩夏さん
彩夏さん
作家を極めたいという気持ちもあり、もっと本気を出して、しっかりと仕事にしていきたいです。そして、見た瞬間に「彩夏の作品」だと分かるような、作品をたくさん作りたい。また、より幅広い感性を持った人の心に「かわいい」と響く作品を生み出していきたいです。ミニチュアフードに出会えて人生がより楽しくなり、幸せを噛み締める日々に感謝しています。



【編集後記】

「熱中し過ぎて気付いたら朝」。それ程のめり込むことに、人生で巡り合える人はどのくらいいるのでしょうか…。私個人の感覚としては、そんなに大勢はいないのですが、協会の会員さんをインタビューしていると、その確率の高さに驚き、とても羨ましく感じます。
彩夏さんは、そんな中でも稀なタイプで、旦那さんがきっかけ。
「熱中している私を見て、喜んでくれています。やっと出会えたねって言ってくれました」というエピソードには、胸がキュンとしました。
また、「お教室の最終日が近づくにつれ、クラスでsayaka先生と会えなくなることが悲しくて、寂しくて…。先生と一緒にお仕事がしたいという気持ちが強くなっていきました」というエピソードも素敵。仕事って「内容」も大切ですが、結局は「人」だと、感じる瞬間が多々あります。協会に集う方々は、本当に人柄が温かくて素敵な方ばかり。「類は友を呼ぶ」って、まさにこのことかなと感じます。
彩夏さんプロフィール
日本ミニチュアフード協会アーティスト
佐賀県出身、東京都在住。
2021年2月に名鉄百貨店で期間限定ショップにて販売。同年3月、AJCクリエイターズコンテストに入賞し、東京都美術館で展示。同年4月、ミニチュアフードコレクションでの販売開始。2023年3月、AJCクリエイターズコンテストの招待作家に選ばれ、東京都美術館で展示。同年4月、大丸神戸で展示販売する予定。
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●インタビュー/tom
頑張る人が笑顔で生き生きと活躍できる社会を目指し、執筆やイラスト制作、デザインなどを行う。モットーは受け取った人の明日が今日より豊かになる情報発信。

※インタビューの内容の中に、現在の協会のシステムと異なる部分もありますが、
会員さんのお話の内容当時のものです。ご了承くださいませ。